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人民元の行方、中国の通貨政策について

2010年11月13日

人民元の行方、中国の通貨政策について

  さる9月25日に、「アジア太平洋時代における日本の東アジア戦略」と題した北東アジア研究交流ネットワークフォーラムに参加した。
 特に興味深かったパネル・ディスカッションは、「金融危機と北東アジア諸国の対応、アジア共通通貨問題」であり、パネリストの一人、柯隆氏(富士通総研経済研究所)の人民元についての意見は大変価値のあるものだった。


 このところG20サミットについての報道では、新興国がグローバル化に対してさらなる開放政策をとる中、中国も人民元切り上げを迫られている。柯隆氏は、エコノミスト増刊号(11月15日号)で「中国はこうして人民元レートを維持している」という興味深い記事を寄せている。(ちなみに私も同誌に「危機を超えて成長する通貨ヘッジファンド」を記載)。
 パネル・ディスカッションで柯隆氏は、以下のように要点を述べた: まず、為替とはその国の経済構造を反映する、通貨の値段である。今年の上海万博をもって、中国では大量の安い労働力に支えられた「ローコスト経済」のフェーズが終わった。だから、通貨の値段ももはや安くなくなっている。一方で中国では、四大国有銀行を守るべく、貸出し金利と預金金利の利ザヤががっちり確保され、金利の自由化は進んでいない。金利の自由化なしに通貨だけの自由化はありえない。
 かつての日本のガチンコの護送船団や直近の郵政民営化に対する抵抗勢力を思い浮かべれば、中国の国有銀行の民営化がスムーズに進むとは思えない。国内に強い規制を残したまま、中国は多大な経常収支黒字を累積し、特に米国とのインバランスが拡大している。しかも中国の貯蓄率は52%と高い。内需拡大を目指す中国をみると、1986年の「前川レポート」を思い出す。
 人民元の国際化について、私には基本的な疑念がある。まず中国のマネーサプライの数値に信ぴょう性があるのだろうか?国有企業は資金がなくなれば、毛沢東のお札を印刷して持ってくるという話があるが、ジョークではないのか?中国では通貨や株価などあらゆる価値は市場が決めるという資本主義の原則が貫徹しないのでは?一方で、食品価格が10月の年間ベースで10%上昇し、インフレは実存している。

 柯隆氏はエコノミスト誌で「資本取引規制をいつまでも先送りすることはできない」とし、「人民元の為替調整はあくまでも中国自身のために行うもの」と述べている。「外圧」を利用しなければ国内改革に踏み出せなかった日本と異なり、中国では、金利自由化が権力闘争と重なる。この金融市場への波乱要因をどう読むか。11月27日に早稲田大学で「日中経済問題先端フォーラム」が開かれ、中国側からは中国人民大学経済学院教授をはじめ8名の学者が報告する。この貴重な意見交換の機会を楽しみにしている。

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